■パーティ当日こんなQ&Aも有りました

【Q】ダイオウイカは深海から抜け出ない理由として、目が大きすぎて太陽光を浴びると失明してしまうからと聞いた事がありますが本当ですか?アオリイカの場合は偏光機能が付いていると聞きますが、ダイオウイカの場合はそういう進化的なモノはなぜ必要なかったのかと。深海に生き続けるという退化なのでしょうか?逆にアオリイカは偏光機能が付いているのに暗闇でも見えているのはなぜですか?そして、先ほどの偏光機能をイカの適応進化ととらえるならば、イカの祖先というのは何種類程存在していたのだろうかも気になります。
【A】ダイオウイカのことはよくわかりませんが、スルメイカの場合は網膜の中にある桿状細胞の中の黒い色素胞がサングラスの役割を果たすそうです。アオリイカの場合も行動から見てスルメイカとほぼ同様と思います。イカ・タコは世界に650種、日本には180程度棲息しています。日本沿岸にも深海性のイカが相当いると思いますが、偏光機能による適応進化を説明できるほどイカの進化過程は明らかにされていません。形態や生理学的研究に加えて遺伝的な研究の進歩にともない近い将来にはアオリイカが祖先である巻き貝やアンモナイトからどのように進化してきたかやがては系統樹が作成されると思います。


【Q】マッコウクジラの数とダイオウイカの数。主な主食としてマッコウクジラはダイオウイカをも襲うと聞いた事があります。では、一日何匹ほどダイオウイカ類を捕食していると推測されますか?バランス的にダイオウイカは推測でどれくらいの数が存在すると思われますか?
【A】私の研究によるとアオリイカの同化率(食べた餌に対する体重の増加)は5〜20%程度と考えています。つまり、1kgのイカになるには少なくとも5〜20kgの餌が必要になるということです。マッコウクジラの同化率は不明ですが、仮に10%ととし、マッコウクジラの体重を50トン、ダイオウイカの体重を70kgとすると、約8000尾のダイオウイカを捕食していることになります。しかし、実際にはダイオウイカのみを捕食しているわけでなく、他のイカや生物も捕食すると考えられるので、緻密な計算が必要と思われます。


【Q】アオリイカは最長何年生きるのでしょうか?
【A】基本的には1年です。最長、500日程度ではないでしょうか。水温が高い赤道付近では寿命が半年程度になると思います。


【Q】アオリイカは共食いするのでしょうか?
【A】孵化直後の稚仔を飼育するとすぐに共食いをします。大きくなると共食いは少なくなりますが、餌の略奪や♀を巡る闘争により、腕の欠損や体表に傷を生じています。産卵期のイカを釣り上げてみると頭や足に傷を生じている固体が見受けられます。


【Q】アオリイカは産卵前と産卵後では捕食の仕方や、回数、量は変わるのでしょうか?また、雌は産卵後に死ぬと言う話を聞いたことがあるのですが、雄はどうなのでしょうか?
【A】基本的に産卵前後で捕食の仕方は変わらないと思います。ただ、秋の成長期のイカは摂餌の活性が高いですが、春以降の産卵期のイカは警戒心も強く秋に比べると活性は低いです。そのようなこともあり、本職の漁師さんは春はイカ釣りを行いません。もちろん、親イカの保護という意味もあると思います。アオリイカは一生のうちに4〜7回程度の産卵を行うと考えていますが、産卵回数が進むと斃死します。集団で産卵し、斃死場面や斃死個体に遭遇した研究者や海士もいます。私は産卵場で何度か斃死した個体を採集したことがありますが、その数は少なくないです。多くは1ペアで産卵すると考えられています。産卵後は雌雄ともに疲弊して徐々に斃死すると考えています。海の底にはウツボやカニが潜んでおり、すぐに片付けられてしまいます。そのため、死んだ死んだイカはダイバーなどの人目に付き難いと思われます。


【Q】リリースしたイカの大体の生存率が知りたいです。
【A】釣獲直後のリリースであれば100%生残していると思います。


【Q】エギング中に青物が回ってきたらアオリイカは釣れ難くなるのですか?
【A】アオリイカは細長い魚、サバ、イワシ、キビナゴ、マルアジなどを好んで捕食します。これらの魚類の群れの中に突っ込んでは多数の魚類を捕食します。このことから考えても餌木を上回るよい餌があればそちらを好むのは当然であり、満腹状態にあることも考えられます。


【Q】アオリイカは自分の身体の大きさと比較してどれぐらいの大きさの餌を捕食できるのでしょうか?
【A】胴長の2倍の長さの魚を食べることを飼育試験で確認しています。定置網の水揚げ物の中にアオリイカに頭を齧られたソーダガツオやアカカマスを何度も見たことがあります。


【Q】アオリイカは音を聞く機能はあるのでしょうか?
【A】イカを飼っている水槽の周りで音を立てると、イカは気付きます。イカが音を聞くというよりは震動を探知すると考えたほうが良いと思います。イカの耳(鰭)が魚の側線のような役割を果たしているという人もいれば、体表で感知するという研究者もいますが詳細は明らかではありません。


【Q】アオリイカがどこまで汚染に耐えれるのか(たとえばBOD、CODといった指標で他の魚と比較して)どこまで汚い海に住めるか何か見解を教えて頂きたいです。
【A】眼で行動する生物であり、アオリイカは濁りや透明度の低い水を嫌います。海水で飼育すると滑走細菌が体表に付着し、即座に斃死する。通常の透明な海水であれば、沿岸部でも棲息可能です。低塩分には非常に弱いために、河川には回遊しないし、大雨による増水が沿岸部に及ぶと沖合いへ移動します。


【Q】ベイトフィッシュの種類、数によってアオリイカが多いか少ないか判断できるヒントになるのでしょうか?
【A】ベイトフィッシュ(アジ、イワシ、グレ、ベラ、ウグイ、キス等)が多いと周辺にアオリイカが多いとは限らないと思います。スズキのルアー釣りのようにベイトフィッシュの中にルアーを投じることはないと思います。基本的に適当な明るさや照度がアオリイカの活性を高めると思います。また、魚もそうですが、基本的にアオリイカも天然礁の潮上でホバーリングをしています。


【Q】アオリイカはエギの頭から抱く事はあるのでしょうか?(他のルアー釣りだとよくルアーの目を狙ってくる事がありますが)
【A】アオリイカは最初に触腕(長手)を伸ばして餌を吸着します。当然、触腕の吸着部位がルアーの眼になることもあると思います。触腕を縮めて素早く全ての腕の中に包み込むように取り込みます。この際には針(餌木の尾)が口の方にあり、足の根元に針が掛かる仕組みになっています。もし、アオリイカがルアーの頭の方から腕の中に取り込んだ場合には、針には掛からないと思います。魚とエビをアオリイカに与えて捕食行動を観察してみると触腕の吸着部位は様々ですが、最終的な腕の中への取り込みは魚の場合は頭から、エビの場合は背中から載るような形になります。そういう意味では、餌木はエビに近いと思いますが、形や色はエビと魚の折衷型だと思います。つまり、エビと魚の特性を餌木に取り込んだと言えるでしょう。


【Q】アオリイカの眼について(通常視力、動体視力、色覚、視野などイカから見えている世界)
【A】アオリイカの視力に関する報告はない。


【Q】縄張り意識はあるのか?
【A】基本的に回遊動物であり、縄張りはないと思いますが、飼育をしてみると群れから除外されている個体が時に見られます。


【Q】1日の最大移動距離
【A】不明ですが、長崎から鹿児島まで11日で170km移動したというのが日本では最高の記録だと思います。私は夏に長崎付近で生まれた個体の一部は秋には青森付近まで移動すると考えています。


【Q】アオリイカが捕食する魚などの種類(データの有るもの無いもの関係なく)
【A】私が実施した飼育試験ではイワシ、タイ型、カレイ型及びアナゴ型まで67種の活魚を全て捕食した。フグやカワハギなど皮の硬い魚種についてはほとんど捕食しなかった。甲殻類についてはエビを好んで捕食するが、アオリイカはコウイカ類が捕食するカニを捕食しない。


【Q】アオリイカの生息域と時間帯における餌木の配色との関係は?
【A】基本的に不明です。私は配色よりも照度とのバランスが重要と考えます。